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なるこ君 オリジナルストーリー 土佐物語 第一弾
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なるこ君 オリジナルストーリー
土佐のよさこい なるこ君 土佐物語 第一弾
《標準語 訳》
せみの鳴く声が聞こえる。
雨も降らないで太陽がギラギラと輝き続けている。
―2010年8月―ここは岡豊城史跡発掘現場、
考古学者とそのチームが手掘りの真っ最中
助手の一人が、あわてふためいて走りこんで来た。
「どうしたんだね。」
「早く来てください。板のようなものだが、なんだか形が…。」
「そうか、でかした、どこだ。」
用心深く周りの土を取り除き、取り出してみると
それは古ぼけた鳴子だった。
「何だ、鳴子か、誰かの落し物だな。」
と博士が手にとりカチャカチャと鳴らして
「土佐の~高知の~」と踊る真似をした。
その時どこからか小さなかわいらしい声で
「そこどいてよ、そこどいてよ。」と聞こえてきた。
皆は、誰かが冗談でおどけて言ったのかなと思ったが、
又「そこどいてよ、そこどいてよ。」と聞こえてきたので、
さすがに一同気味が悪くなり、シーンと静まりかえった。
その内、隊員の一人がマッ青な顔で博士の持っている鳴子を指さした。
見ると鳴子が赤く発光しだしたので博士はびっくりして鳴子を作業台の上に放り投げた。
皆がかたずをのんで見ていると、鳴子から手足がニョキニョキ生えてきて、
顔も現れ見事な朱色に変わってきた。
一同唖然となったその時、鳴子は起き上がって「あ~良く寝たな!」としゃべった。
皆は腰を抜かしそうになり、中には逃げ出そうとする者まで居て、てんやわんやの大騒ぎになった。
博士が気を取り直して、
「君は一体・・・・・・・?」
「ボクは なるこ君です。」
「イヤ、それは見れば分かるけど・・・・・・で、いつから
ココで寝てたんだね?」
「ボクは長宗我部の殿様にお世話になっていたんです。」
と言った。
博士が驚いて口を開けて突っ立っていると、
鳴子が立ち上がり皆に「そこどいてよ、そこどいてよ。」と
言いながらピョンと飛びおりて踊りだした。
博士はそばにかけ寄り
「じゃあ君は400年もここで眠っていたのかね?」と聞いた。
「いえ、殿様と別れてさびしくなり、そのまま寝入り込んでしまっていたんです。
でも一度目を覚まして、はりまや橋に踊りに行ってたんです。」
「君は踊りが好きなのかね?」
「はい、その時にボクの大好きな龍馬さんとか慎太さんとか、土佐のみんなと友達になったんです。」
「え~!?君は龍馬も知っているのかね。」
「はい、皆いい人でした。」
「それで、それで・・・・・・」
「はい、長い間、皆と楽しく踊って暮らしていたんですが、ある日、龍馬さんが居なくなって、京で慎太さんと
一緒に死んだと聞いて悲しくて、悲しくて、気を失ってしまいました。
それで今、久し振りによさこい踊りの唄が聞えてきて目が覚めたんです。」
「ひょっとして君がよさこい踊りを始めたのかね。」
「いや、ボクは体が小さいから、人に踏まれないように(そこどいてよ、そこどいてよ。)と
唄いながら踊っていたら、村のおじさんがボクを抱いて(そこどけよ、そこどけよ。)と
一緒に踊ってくれたんです。そうしたら子どもたちがボクも、あたしもと言い出して―、
ボクの人形を作って子どもたちに持たせて皆で踊り始めたんです。」
その頃には、みんな妙に人なつっこくて、愛嬌のあるなるこがだんだんかわいらしく思えてきた。
博士も落ち着きを取り戻し
「君、色々話を聞きたいのでわしと一緒に来てくれんかね?」
「うん、いいけど、久し振りによさこいの歌を聞いて
嬉しくなったんです。ボクを早くはりまや橋へ連れて行って・・・」
皆すっかりなるこ君のことが好きになり、ちょっぴりおめかしし、
なるこ君と博士の後についてうれしそうに
「そこどけよ、そこどけよ。」と唄いながら、はりまや橋を
目指して行進しました。
-はりまや橋が見えてきた さぁ、みんなで踊って踊って
踊りまくろう-
そう、ボクは土佐のなるこ君
-終-

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